トップ>豊川堂 本屋の新聞> 本屋の新聞エデュケーション 教科書デジタル化を問う (1/1)
デジタル教育は日本を滅ぼす 緊急提言! 便利なことが人間を豊かにすることではない!

 ポプラ社の坂井社長から手紙が届いた。「原口一博総務大臣(当時)が二〇一五年から小中学校でデジタル教科書を導入すると発表したが、とんでもないことだ。教育について議論がなされないまま教科書のデジタル化が一人歩きを始めている。デジタルの利便性ばかりで教科書をデジタル化してよいのか。ポプラ社は田原総一朗氏の『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす』を出版する。」という内容であった。

 ある政治家がネット上で知り合った人に「フェイストゥフェイスで話をしよう」と集まってもらった。ところが、皆んなの一言が短いうえに誰もなかなかしゃべらない。「顔を合わせているときもツィッターのやりとりがいい。」という笑うに笑えないことになった。

 学校の教育は「正解」と「間違い」を教えるだけではない。例えば、数学の教師が自分と数学との出会いから心から数学に惚れるまでの経緯やその面白さを熱っぽく語る。そこから生徒の数学熱に火がつく。また、正解以外の答えがまったく評価されない教育では想像力、創造力が育たない。稲盛和夫氏は「世の中に失敗というものはない。チャレンジを諦めた時にそれは失敗になる。」という。

 社会で取り組む問題のほとんどに正解はない。正解のない問題を解くには想像力を発揮し、コミュニケーション能力を駆使して徹底的に論じ合わなければならない。そこからいくつもの答えが出てくる。いくつもの答えを論じ合うなかで取り組みが定まってくる。

 学校も同じである。デジタルで自己完結の形で正解が出るようになっては、せっかくの異分子がいてもぶつかり合いもなく、刺激もし合わない。こんな教育では人間を豊かにするどころか、どんどん貧弱かつ単純にしてしまう。

 今こそ教育とは何かを徹底的に論じ、子どもの「何のために勉強するの?」に答えてやらなければならない。物的資源の乏しい日本にとって一番重要なものは人材である。子どもたちが夢、希望、抱負を持って生きていけるように導いてやることが、教育にとって最も大切である。学校の教師ばかりでなく、広く皆さんに子どもの教育について考えていただきたい。

頭脳(あたま)の散歩 デジタル教科書はいらない

今年は[国民読書年]。それに合わせ、読書を薦める二人の対談が緊急出版された。デジタル化は決して悪い訳ではない。情報を適確に速く捉える事が大切なのは間違いない。デジタルデータは、いつでも簡単・自由に取り出すことが出来る。利便性を備える電子機器とソフトの普及・浸透はそういう意味では時代の変化にマッチしているのである。

 だが、人間の思考はどうだろう。年齢とともに考え方や記憶はうつろい変わっていくものだ。学校教育にデジタル教科書がどんな影響を与えるのか? 教師と生徒とのコミュニケーションは取れるのか? 子どもの思考力は養えるのか? などなど、多くの疑問が前方に立ち塞がる。

 腕時計が[アナログ→デジタル→アナログ]と変化し、教育も[詰込→ゆとり→見直し]と変わった様に、デジタル教科書も思考錯誤を繰り返すのか? ただ、実際にデジタル化された教材または教科書で教育を受けるのは子ども達である。これだけは忘れてはならない。(え)

電子書籍大国アメリカ

 日本より一足先に電子書籍が普及しているアメリカからの報告。遠からず日本が直面するであろう状況とともに、これからの出版文化の推移を語る。

 毎年七月に東京ビッグサイトで催される国際ブックフェアでは、「電子書籍元年」と言われるだけあって、同時開催のデジタルパブリッシングフェアは大変な盛況ぶりだった。最新のガジェットが数多く展示されていた。ただ熱しやすく冷めやすい日本人、黒船の襲来とばかりに紙の本が無くなってしまうという危機感のみがクローズアップされていたように思う。

 「アメリカでの電子書籍の書籍全体に占める割合は二〇〇九年の数字で8%、一割にも満たない。二〇一〇年はそれが10%に到達するかしないか。前年比の成長率でいえば130%増という華やかな数字になる。」と著者がアメリカでの現状を語る。決して誰もが電子書籍というわけでもない。ただアメリカの出版業界は日本のそれとは違い、とてもしなやかな対応だ。各企業のつながり、たとえそれが買収であっても成長を続ける。当然リストラは免れないが、電子書籍は出版業界全体が超えるべきハードルの1つと考える強さもそこにある。

 本に未来はあるか? 答えは人それぞれ違うだろう。本がデジタルであるなしに関わらず、読書に多様性が求められ、新たなビジネスチャンスが生まれるのでは。(中)

電子書籍の時代は本当に来るのか

 にわかに出版業界を賑わす事件が勃発した2010年。言わずと知れたアップル社・iPadの日本上陸だ。ニュースはこぞって「電子書籍元年」と報道するが、実は過去にも何度かムーブメントは起こりかけた。

 では一体どうして広がりを見せずに今日に至ったのだろうか?読みやすい端末がなかったから?ソフト(電子書籍)のタイトルが少なかったから?それらはもちろん大きな理由だろう。しかし、そこにはもっと複雑な事情が横たわっている。

 特に日本の出版業界は、成り立ちや仕組みにおいて、アメリカとは大きな違いがある。その中でも再販制度の存在は一番大きいだろう。簡単に言えばつまり、日本全国どこで買っても本の価格は定価販売で同じということである。ところが、電子書籍のメリットは、コストがかからず低価格という点である(電子書籍は再販の適用外)。すなわち、一物二価が生じることになる。環境によって文化的な利益を享受することに不公平が生じることになる。

 アマゾン・アップル・グーグルなどの最新動向を詳らかに著しながら、書籍の未来を占う一冊。(加)