電子書籍大国アメリカ
日本より一足先に電子書籍が普及しているアメリカからの報告。遠からず日本が直面するであろう状況とともに、これからの出版文化の推移を語る。
毎年七月に東京ビッグサイトで催される国際ブックフェアでは、「電子書籍元年」と言われるだけあって、同時開催のデジタルパブリッシングフェアは大変な盛況ぶりだった。最新のガジェットが数多く展示されていた。ただ熱しやすく冷めやすい日本人、黒船の襲来とばかりに紙の本が無くなってしまうという危機感のみがクローズアップされていたように思う。
「アメリカでの電子書籍の書籍全体に占める割合は二〇〇九年の数字で8%、一割にも満たない。二〇一〇年はそれが10%に到達するかしないか。前年比の成長率でいえば130%増という華やかな数字になる。」と著者がアメリカでの現状を語る。決して誰もが電子書籍というわけでもない。ただアメリカの出版業界は日本のそれとは違い、とてもしなやかな対応だ。各企業のつながり、たとえそれが買収であっても成長を続ける。当然リストラは免れないが、電子書籍は出版業界全体が超えるべきハードルの1つと考える強さもそこにある。
本に未来はあるか? 答えは人それぞれ違うだろう。本がデジタルであるなしに関わらず、読書に多様性が求められ、新たなビジネスチャンスが生まれるのでは。(中)
