宝探しは自分探し?

『アルタンターハ 東方見聞録奇譚』 長崎尚志 講談社 ¥1,680
浦沢直樹とともに、20世紀少年など多数の作品を生み出したコミック原作者・長崎尚志が初小説に挑んだ。
ながく不仲であった父親の死に際し、謎の男が貞人に近寄る。源田と名乗るその男は、大戦後モンゴルで父親とともに抑留されていたという。そこで父親は、あるモンゴル人から黄金伝説を聞かされたという。子どもの頃、父から聞いた奇妙な詩の意味を、古本屋の篠原らの協力を得ながら解読してゆく貞人。やがて明かされる宝の在り処と父親の心…。
13世紀にピサのルスティケロが、マルコ・ポーロの旅行話を記録した「東方見聞録」。
そのなかで黄金の島と紹介されたジパングは、当時鎌倉時代であった。一説によれば、頼朝に滅ぼされた奥州藤原氏が建立した、平泉の中尊寺金色堂をして黄金郷と呼ばれた所以とされている。ところがマルコ自身は日本には来ておらず、中国での伝聞を口述したにすぎないとの見方もある。
この東方見聞録にまつわる2編の宝探しの話は、同時に2人の男たちの自分探しの物語になっている。古本屋の篠原を主人公とするもう1編の宝探しとともに、伝奇的なストーリーのなかに、家族のつながりを描き出した秀作であることは間違いない。 (中)