試される愛


『グラーグ57上・下』 トム・ロブ・スミス 新潮文庫 各¥700
昨年度『このミス』海外編1位を獲得したばかりか、ミステリ関連の賞を総ナメした『チャイルド44』。その続編といえば、オモシロくないワケがない。
米ソ冷戦真っ只中の1956年、フルシチョフは前書記長スターリン批判を展開する。オセロゲームで次々と裏返されていくかのように、国家の上層部は震撼し、人民は翻弄されていく。粛清の嵐。念願のモスクワ殺人課を創設したレオも同様に、国家権力の波に飲み込まれていく。かつてレオを愛し裏切られ、どん底から這い上がり復讐に燃えるフラエラ。レオのライーサの真摯な愛の裏側にあるもの。両親を目の前で殺され心を閉ざす少女ゾーヤ。著者は登場人物たちの過去の記憶を原罪として捉え、それぞれの過酷な人生を炙り出す。彼等の振幅が激しく揺れ動く心理描写と革命的状況設定が見事にシンクロしている。
強制労働収容所『グラーグ57』を舞台に、レオにとって鍵を握る重要人物の救出作戦がはじまる。 (中)