古くて新しい日本人論

『日本辺境論』 内田樹 新潮新書 ¥777
「日本人とは何ものか?」そんな質問には、言い淀んでしまう人がほとんどではなかろうか。
本書では、日本人を「辺境人」と呼び、邪馬台国や新渡戸稲造の『武士道』、更にはマンガなどを取り上げ、その特性を喝破していく。
例えば、自分の意見の言えない日本人を著者はこう推察する。
「『そういうむずかしいこと』は誰かえらい人や頭のいい人が自分の代わりに考えてくれるはずだから、もし意見を徴されたら、それらの意見の中から気に入ったものを採用すればいい。そう思っている」。そんな状態だからこそ「学ぶ姿勢も効率的」だと言う。それが新聞の社説だったり、知識人の意見だったりする。だとすればこの本を読んでいる僕も、生粋の「辺境人」だ。
誰かの「背中を見て育つ」というのも日本人が生きていく上で編み出した知恵なのかもしれない。
忘れかけていた私たちの特性を、再び教えてくれる一冊だ。 (優)