命より大切なもの

『神様のカルテ』 夏川草介 小学館 ¥1,575 美しい自然に抱かれた小さな病院の、心温まる命の物語。 主人公・栗原が勤務する病院のモットーは、「24時間365日対応」。患者はいつもあふれかえっているが、医師が足りない。専門外の診療にも追われ、食事や睡眠も十分にとれない毎日。そんな彼に突然、母校の医局から誘いがかかる。医局に入れば休みも収入も増え、最先端の医療を学ぶこともできる。 「でも、大学病院に行くためには、ここを去らなければいけない」 はざまで悩む栗原を決心させたのは、最期を看取ったがん患者の「天国」からの手紙だった。 実際に地域医療に従事した経験を持つ著者。現実社会における医療格差、医師不足、終末医療のあり方などに対する憂いの書でもある。 (池)