日本国家の青春時代

『「坂の上の雲」と日本人』 関川夏央 文春文庫 ¥610
11月下旬からようやく待望のドラマ『坂の上の雲』がはじまる。関連本も最近続々と刊行されているが、その中の1冊。『坂の上の雲』に秘められた多くの謎を解き明かしながら、司馬文学の核心にまで迫る。なぜ明治の文豪である夏目漱石でなく、正岡子規なのか?なぜ司馬遼太郎は乃木将軍の評価が低いのか? 日本の連合艦隊はなぜ対馬海峡でバルチック艦隊と遭遇することができたのか? 明治維新という無血革命を成し遂げるも、国際社会では赤子同然の三等国・日本に欧米列強が牙をむく。不平等通商条約を改正し、奇跡といわれた日英同盟を締結させる。日清・日露戦争の勝利によって、日本は遂に第一等国へ。坂の上の遥かな雲を追いかけながら、秋山兄弟・子規と同様に、成長を続けた明治の日本国家はまさしく青春を謳歌していた。 日露戦争勝利から太平洋戦争終結、戦後復興からバブル崩壊。その世代交代、成長と衰退がそれぞれ約40年という周期も興味深い。 (中)